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シュークリームゲーム

 
八神家




 
SS:シュークリームゲーム




「ここに人数分のシュークリームがあります」

いつものように台所に立っていたはやては、皿の上に綺麗に並べられたシュークリームを家族が囲むテーブルの上に静かに置いた。
はやての笑顔が楽しそうだから、何かあると一同は察する。
「中身はカスタードクリーム。せやけど、1つだけハズレがあります〜」

ーー来た。

つまりは、ロシアンルーレットだ。
穏やかな昼下がりの空気が、ゆっくりと変わる。
テーブルを中心に、互いに視線を交わす。この事態の回避方法ではなく、誰からチャレンジするかという意味で。
ヴィータがさりげなくリインに視線を送る。その意味を察して、リインは首を横に振った。
思念通話をしなくても、言いたいことはわかる。
一緒に台所でおやつの用意をしていたが、はやてがそんな仕込みをしていたなんて、まったく気がつかなかった。
同じく台所から、午後のお茶を持ってきたアギトも諦めた顔をする。

食べるしかない。

「いただきます」
真っ先に手を延ばしたのは、守護騎士の将シグナムだ。
はやての発言をまるで気にしていない様子で、シュークリームを頬張る。
「・・・」
周りの視線が痛いくらいに突き刺さるが、シグナムは気にせずにシュークリームを食べ終わる。
「これは・・・」
「翠屋のシュークリームやから、甘いものが苦手なシグナムやザフィーラでも平気やろ?」
先程の爆弾発言はどこへやら、はやてはさりげなく1つを手に取り、ザフィーラに差し出した。
「ありがとうございます」
口が大きいザフィーラは、躊躇うことなく一口で口に収めると、咀嚼する。
その様子にも、異常はない。
「な?美味しいやろう?」
「はい」
もしかして、爆弾発言は嘘か?
残ったシャマル、ヴィータ、リイン、アギトがそう思いかけた矢先、
「5分の1の確率や」
ぽつりとお茶を口にしていたはやてがつぶやく。
無事だったシグナムが視線をそらし、ザフィーラは伏せる。
烈火の将と、蒼き狼は助けてくれないらしい。
「いっただきまーす!」
ヤケクソ感を含ませながら、次に手を延ばしたのは、ヴィータだ。
「私もいただいちゃいます」
ようやく腹を決めたのか、シャマルもそれに続く。
リインとアギトが凝視する中で、2人は最初の一口だけは警戒している様子だったが、その後は実に美味しそうに食べる。
つまりは、アタリを引いたということで、テーブルに残る3つのうち、どれか1つがハズレ。
「いつもなら、真っ先にに食べるのになぁ」
楽しげに笑うはやて。
いや待て。誰の所為だ。なんて文句が喉まで出かかる。
それをぐっと堪えていると、はやてが1つを手に取って、口にする。
「やっぱり、翠屋のシュークリームは美味しいなぁ」
これもアタリ。
残るは、リインとアギト。
「・・・」
「・・・」
互いに視線をぶつけ合い、互いに牽制し合う。
ハズレの中身がなんであれ、ここまできてしまうと、いつもの勝負と変わりない。
今回のお題目は、運試し。
勝てば勝利の余韻と、美味しい翠屋のシュークリーム。
負けた方には、悔しさと中身不明のシュークリーム。
勝敗決するのは、早い者勝ちか。残りものには福があるか。
「いただきま〜す」
一瞬の隙をついて、アギトがシュークリームを手に取り、口にする。
先手必勝と考えた行動だ。
対してリインは、アギトの動向を伺うことにしたらしく、最後の1つを手に取りはしたが、頬張る様子はない。
居間に漂う緊張。
その中で、アギトが口を開いた。
「・・・おいしぃ!」
紛れもない喜びと共に、アギトの表情がパッと明るくなる。
そして、対象的に暗くなったのは、リインの表情だ。
シュークリームは7つ。
最後の1つ。
みんなが何もなければ、答えなど考えるまでもない。
手元のシュークリームに視線を落とし、これから起こり得る喜劇ーーいや悲劇に、打ちひしがれる。
食べないことを選ぶこともできる。
だが、それだけはできないと、自分の中の騎士の誇りが主張する。
食べて誇りを守るべきか。いや、誇りなどより大切なものはあるはずだ。
葛藤渦巻く中で、恐る恐るシュークリームを口元まで持ち上げるが、そこから先が進まない。
はやてのことだから、激辛とかからし大量とか、そういうことはやりそうにない。テレビで見たことがあるハズレは、そういうモノだ。
だからこそ、なにを潜めているのかがまったくもって、予想がつかない。
生唾を呑み込み、ここまできたら引くわけにはいかないと、心を決めて、
「お、隙あり」
横からはやてがリインのシュークリームにかぶりついた。

「あ」

見事なまでの全員一致の声に、はやては口を動かしながらも笑った。
「主はやて!?」
「主!?」
「はやて!?」
「はやてちゃん!?」
「マイスター!?」
驚き慌てる一同の中で、口の中のシュークリームを呑み込んだはやてが腹を抱えて笑出す。
「ハズレがあるとは言うたけど、中身はカスタードクリームとも言うとったやん」
「つまりはやてちゃんの言うハズレっいうのは・・・」
ようやくショックから立ち直ってきたリインは、ぐるぐると渦を巻く状況を理解し始めた。
手元にあるのは、少しだけど、はやてにかじられたシュークリーム。
「私に少し食べられてまうってことかな」
いたずらが上手くいって上機嫌のはやては、ザフィーラに背を預けてまた笑う。
あまりに笑うものだから、少し欠けたシュークリームを皿に戻したリインが、頬を膨らませてはやてに抱きついた。
「も〜!!はやてちゃん、ひどいです!」
ポスポスと、自分の不満をこめてはやての胸を叩くと、はやては笑ながらリインを抱き締めた。
「ほんま、リイン可愛かったよ」
「はやてちゃん!」
ぷりぷり怒ってみせたって、はやては笑うだけだ。
その様子を見ていたヴィータが更にはやてに抱きつき、後ろにひっくり返ったはやてを受け止めたザフィーラが少し迷惑そうな顔をして、シグナムとシャマルが顔を見合わせて苦笑し、アギトが怒りながらも嬉しそうなリインを見て笑う。

嘘は、ついていないよ。

| 八神家 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) |

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