05
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
--
>>
<<
--

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
<< O Store Gud | main | 夜の中の黒 >>

炎の誓い



シグナムと、アギト







SS:炎の誓い



「そんなことで、早く迎えにきてくれよな」


「おい」

何がそんなことなのかを聞く前に、通信は一方的に途切れた。

かかってきたのも一方的だったが。

「・・・」

こちらからかけ直してやろうかと思ったが、考え直す。

それこそ、無駄な労力だ。

溜息だって出ない。

「あ〜・・・、シグナム?」

それでも不機嫌な空気は伝わったらしい。隣りを舞うアギトが、顔色を伺っていた。

同じユニゾンデバイスのロードでも、はやてはこんな気遣いはさせないはずだ。

そう思うと、まだまだ未熟者であると実感する。

「ヴィータにも困ったものだ」

大げさに肩をすくめてから、チラリとアギトを見れば、苦笑しているアギトが視界に入る。

「少しぐらい待たせても問題ないだろう」

「いいの?」

「いいさ」

多少は文句も言われるだろうが、こちらにだって都合がある。

長い付き合いだ。説き伏せ方も、充分心得ている。

アギトを肩に座らせて、歩き出したシグナムは片手に持った袋に視線を落とす。

「この手土産を気に入ってもらえるだろうか?」

「なに、持ってきたの?

そう聞かれて、答えに詰まる。

ここに来ることをはやてに告げたとき、はやてにしてはやけに強引に持って行くようにと渡されたのだ。

中身は、着いてからのお楽しみらしい。

「わからないが、主はやてからの手土産だ。悪いモノのはすがない」

「まぁ。シグナムが選ぶよりは、確実かな?」

その言葉に、違いないと、応じる。

アギトと共に過ごす時間が増えるにつれて、こういうやりとりも増えてきた。

最初は、互いに遠慮しあって、ろくに言葉も交わすこともしなかったことを思えば、大きな進歩だ。

「だが、まずはお前の元気な姿が一番の手土産だろう」

そう言って、立ち止まったのは、ある男が眠る墓だった。

「旦那。久しぶり」

アギトは、ふわっとシグナムの肩から飛び降りて、フルサイズになる。

あの短い旅路では、フルサイズになることはなかった。プログラムが一部破損していたために、フルサイズになることが出来なかったのだ。

かつて、様々な実験を受けていたが為に破損したプログラムは、破損しすぎて修復不可能なものもあったが、ほとんどの機能を取り戻している。

管理局は、異世界も含めて、ユニゾンデバイスの知識では最も秀でているからだ。

「しばらく来てなくてゴメン。これで結構、忙しくてさ」

慣れない仕事もあったが、自身のメンテナンスや、シグナムとのユニゾン訓練、新しい魔法の練習と、やらなくてはならないことはなくならない。

忙しいが、充実している。

そして、それに満足している自分がいる。

「騎士ゼスト。今日、ようやく申請がおりました」

アギトの傍らで、シグナムは穏やかな顔つきで口を開いた。

「今までは、保護観察の意味での同居という形でしたが、今日からアギトが正式に我が家の一員になるとこを法的にも、認めてもらうことができました」

伸ばした手が、アギトの頭に載せられる。

毎日欠かさず剣を振るうシグナムの手は、女性らしかぬ無骨さだが、アギトはそれが好きだった。

誇り高き、騎士の手だ。

「アギトを託してくれたこと、感謝します」

本人を前にして、彼に言うのもどうかと思うが、回りくどい話は苦手だった。

もう一度アギトの頭を撫でると、

「少し席を外す。その間、報告を済ませておけよ」

堅苦しい話し方。だけど、その中に込められた優しさは、ずいぶん前から気が付いていた。

アギトが頷くのを見て、シグナムは元来た道を戻る。

その後ろ姿を見送りながら、アギトは、不器用なロードに苦笑する。今日のために、仕事に忙しい合間をどうにか都合して来た。多分、今受け持っている案件のことで、連絡をするのだろう。

アギトがやるべき仕事だが、今日ぐらいは甘えさせてもらう。

1人残ったアギトは、墓に向き直った。

「シグナムは、旦那に似てるよ。堅物で、真面目で、剣に誇りを持っていて、最高の騎士だ」

その騎士の融合機であること。それが、アギトにとって最高の誉れとなる。

「家族もみんな優しいって言うか、温かいって言うのかな?

ヴィータの姉御は、よくいろんなところに連れてって遊んでくれる」

頼れる姉貴分のヴィータ。

「シャマ姉は、仕事じゃ頼れる女医さんって感じなのに、家じゃ結構ドジするんだ」

おっちょこちょいなシャマル。

「ザフィーラは、気がついたら子供に囲まれてんのな。でも、好かれんのもちょっとわかる気がする」

子供に好かれるザフィーラ。

「リインは・・・あいつとは、喧嘩をよくする。でも、悪い気はしないな。・・・こう、遠慮しなくていい相手って感じ」

自分と同じ融合機、リイン。

何かと喧嘩もするが、それがいつしか互いのコミュニケーションのひとつになっている。

「マイスターは・・・一緒にいるとホッとする」

一家の主、はやて。

「最初は照れ臭くてさ、うまく言えなかったんだけど、今はただいまって言えるようになったよ」

天井のない旅の暮らしも嫌いではなかった。目覚めたときに、視界に入る空の青さが好きだったから。

天井のある今の暮らしが好きになった。どうでもいい事で盛り上がり、くだらない事で笑い合う。家族だから見せる姿があって、家族だから過ごす時間ができた。

「帰る家があって、一緒に過ごす家族がいて、自慢のロードがいて、ほんと夢みたいだけど、夢じゃない」

アギトはギュッと目を瞑る。

「旦那に助けてもらって、本当によかった」

時々、彼の低く太い声を思い出す。

旅の間に交わした言葉や、体験した出来事や、過ごした時間を思い出す。

「ありがとう」

心から、感謝の気持ちがあふれる。

「ありがとう、旦那」

 

どれぐらいの間、頭を下げていたのか。

「アギト」

少し遠くから、シグナムが声をかけてきた。

あわてて頭を上げると、目元の涙をあわてて拭う。

シグナムはきっとすぐに気が付くだろう。だけど、なにも言わないでいてくれる。そういうヤツだ。

「主はやての手土産を見たか?」

その顔に浮かぶ苦笑の意味がわからずに、首を横に振る。

「袋から出してみろ」

そう言われるままに、シグナムが置いていった袋を開いて見ると、アギトは目を丸くした。

「ワインと・・・これって・・・」

取り出したアギトの小さな手のひらの上で輝くのは、かつてゼストが愛用していたデバイスだった。

「起動も全くできないが、騎士ゼストの遺品だ」

「でもこれって!」

あの事件の後、戦闘機人を斬った証拠物件として押収されたはずだった。

「展開機能は別に取り出されているから、中身はないに等しいと、主はやては仰っていたよ」

ついさっきあった通信で、シグナムも同じ説明をはやてから受けた。

 

許可をもらうにはかなりの手間がかかったはずだが、はやては何事もなかった顔で言った。

「デバイスも、一緒にいたいと思ってな」

親しい間柄の相手にだけ見せる、本当に無邪気な笑顔。サプライズがうまくいったからだろう。楽しそうに隣りのリインフォースと笑いあう。

そんな笑顔に、ただ、ただ、頭が上がらない思いだった。

 

「一緒に眠らせてやろう」

アギトの隣りに立ったシグナムは、鎖を鳴らして待機状態のレヴァンティンを取り出した。

「命を預け、運命を共にする。それが使い手と武装の歩む道だ」

Ja.

炎の魔剣。

シグナムの魔力変換資質を最大限に引き出す愛機。

レヴァンティンもまた、同じ答えのようだ。

「・・・旦那もきっと、喜ぶよ」

少し、アギトの声がかすれる。

シグナムは、黙って頭をなでた。

 

「アギト。晩ご飯のリクエストを主はやてに連絡しておけ」

「へ?」

墓地から離れ、停めてあった車に乗り込むと、シグナムは通信画面を操作しながらそんなことを口にした。

「ヴィータを拾ったら、家に直帰だ。お前が家族になったお祝いをするそうだ」

喜んでもらうのは嬉しいが、アギトは前にも似たようなことがあったことを思い出す。

「シグナム、それって前にやってもらったよ?」

確か、八神家に引き取られることが決まったその日に、はやての手料理を囲んだはずだ。

「あれは、うちに来たことに対してのお祝いだ」

首を傾げて当時を思い出そうとするが、何分にも緊張していたから、はっきりとは覚えていない。

「でも、いいのかな?」

「主はやてがそう仰っていたんだ。大丈夫だ」

その言葉でようやく納得したアギトは、窓の外に視線を移して考え事を始める。

その姿を横目に、シグナムはヴィータにあと少しで迎えに行くことを伝えて、車を出した。

平日だからか、周りに他の車はない。

滑るように車は走り出す。車内は、エンジン音だけが低く響く。

「なぁ、シグナム?」

「なんだ」

晩ご飯の相談ではないだろうと、わかっていた。

「さっき、旦那の前でさ、言ったよね」

 

「命を預け、運命を共にする。それが使い手と武装の歩む道だ」

 

見上げると、シグナムの真剣な眼差しが眩しかった。

この人と共に歩んで行きたい。それは、紛れもないアギトの本心だ。

「あたしも、同じ道にいるの?」

シグナムの過去は、聞いている。

シグナムとレヴァンティンは、とてつもなく長い時間を過ごして来ているのだ。

嫉妬ではないはずだが、気になってしまうのは事実だった。

「あたしは、まだ短い間しか一緒にいないけどさ」

「時間は、関係ない」

運転中のため、前だけを見つめながら、シグナムはハッキリと口にする。

「とてつもなく長い間共にして来たが、未だにヴィータやシャマル、ザフィーラに意外な面を見る。そういう時、時間の長さは差程重要ではないと感じる」

ヴィータが、あれ程教導に向いているとは思わなかった。

ザフィーラが捜査官として活躍していることも、シャマルが無茶をする患者に厳しくなることも、想像できなかった。

「互いに命がある以上、いつか別れる時はあるかもしれないな」

「・・・そう、かもね」

互いに人間ではないが、命があることは知っている。

命があると、言ってくれる人たちもいる。

だからこその、別れがあることも知っている。

 

「だが、誓う。お前を孤独にはしない」

 

赤信号で車が止まる。

 

「お前の居場所は、私の隣りだ、アギト」

 

燃えるような熱き想い。

シグナムの太刀筋と同じ、迷いのない言葉。

全てがアギトのために向けられたもの。

すっと、シグナムの片手が差し伸べられた。始めて差し伸べてくれた時のように。

「我が剣にかけて」

「・・・うん」

 

走り出した車の中で、アギトは涙をぬぐった。
| 八神家 | 03:14 | comments(0) | trackbacks(0) |

スポンサーサイト

| - | 03:14 | - | - |
Comment









Trackback
url: http://gorsch2tera.jugem.jp/trackback/153