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O Store Gud

 

シャマル





SS:O Store Gud


「シャマル先生!」
 白衣のポケットに両手を突っ込み、勤務している病院の廊下を歩いていたシャマルは、張りのある元気な声に振り向いた。
「あら?」
 慣れた手付きで車椅子を巧みに操る少年が、滑るようにこちらに向かってくる。
 その顔には、見覚えがあった。
「こんにちは、シャマル先生!」
「はい、こんにちは」
 屈んで視線を合わせると、少年の輝くばかりに眩しい視線とぶつかる。
「今日は定期検診?」
「そ。超右肩上がり」
 にっと前歯の欠けた笑顔。
 シャマルの顔の前まで、突き出されたブイマーク。
 言葉の使い方はともかく、少年の溌剌とした表情が彼の言葉を裏付ける。
 今夜が峠だと医師に告げられてから、2ヶ月が過ぎた。
 あの頃、彼にまとわり付いていた空気はもはや微塵も感じられない。
「今日、はやていないの?それか、ザフィーラ!」
 管理局の彼女の部下を始めとした大人たちが聞いたら、顔を青ざめるか、少年を咎めるか。
 そんなことを考えて、シャマルはおかしくなる。
 当の本人は、まったくそんなことに頓着しないのだから。
「八神特別捜査官、でしょ?」
「テレビではやて見たよ!」
 かっこよかった!と、少年が両手を握りしめて力説する。当然、シャマルの訂正はまったく聞いていない。
「正義の司令官って感じだった!」
 犯罪を取り締まる管理局の捜査官だから、「正義の」と付くことは間違っていないのだが、特別捜査官がなんであるかは、少年にはまだ難しい話だ。
 彼に理解できているのは、入院中に会ったことのあるはやてがすっげぇ奴だったことだ。
 広報部などの取材は受けないはやてだから、きっと事件解決報告のための記者会見か何かで見たのだろう。
 確かに、大勢の記者に囲まれる中で、堂々と事件解決の過程を説明するはやてはとても評判がいい。
 さすがに、子供受けまでいいとは、誰も思わなかっただろうが。
「ザフィーラが魔法教えてくれるって言ってたから、教えてもらうんだ!」
 それで、と少年は言葉を繋ぐと、また歯の抜けた満面の笑顔を見せて、
「俺も正義の味方になる!」
 廊下に響くくらいの大きな声に、通りすがりの病院スタッフや、患者や、その家族がこちらを振り向いては、歩み去って行く。
 その中で、少年の闘病中を知っているスタッフ達は、嬉しそうに笑い合う。
「八神特別捜査官も、きっと歓迎するわ」
 見る人を温かな気持ちにさせる笑顔のままで、きっとはやては喜ぶだろう。
「ほんと!?正義の味方になれる?」
「うんと頑張れば、なれるわよ」
 あれはダメだ、これは危ないと、制限だらけの日々だったが、それもあと少しの辛抱だ。
 同僚の話では、筋力の衰えた足のためのリハビリも視野にいれていると聞いている。
 もう少し。
 それがとても大変なことであることは、医療従事者であり、かつて同じ様に大変な道を歩いてきた少女たちを見守ってきたから、充分に理解している。
 でも、彼が自分の夢を始めて口にしたのだ。
 未来があると信じるからこそ、夢を語ることができるのだ。
「うん!」
 眩しく笑う少年は、輝いて見えた。


 シャマルは、よく写真を撮る。
 それは、はやての成長を何かの形に残しておきたかったのがきっかけだったが、今でははやてのみならず、様々な人を被写体にする。
 当然、写真の数は増える一方だ。
 写真をデータとして保存しておくが、中には現像して、アルバムに保存することもある。
 そのアルバムの中に、2枚の写真が、あった。
 1枚は、真っ白な廊下で、シャマルと一緒に撮った写真。
 車椅子に乗る少年の歯の抜けた満面の笑顔が、眩しい。
 ぎこちない敬礼が、可愛らしい。
 もう1枚の写真は、シャマルではなく、青い制服を身に纏った男女の姿。
 制服を隙なく着こなした様子の女性は、誰でもない、はやてだ。
 胸に輝く襟章が、彼女の立場を語る。
 そしてその隣の青年は、浮いた感じの制服、緊張ぎみの引きつった笑顔を浮かべながらも、自分の足で大地を踏みしめて、しっかりとした敬礼をとっている。

 正義の司令官と、正義の味方が、笑っていた。 



| 八神家 | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) |

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